過去に道具として誕⽣した⾐料品が当時の⼈々によって使⽤されることで⽣まれる唯⼀無⼆の⾵合い。これらは現代において貴重なヴィンテージピースとして価値を⾼め、ファッションシーンで強い⽀持を集める。そんな熱狂を横⽬に、現代から過去に遡るように服を纏い、独⾃の視点でファッションと向き合う農家/モデルの⼤鷲陽⼀さんに話を伺った。

▪農家とモデルの⼆⾜の草鞋
-⼤鷲さんは農家とモデルという異⾊の兼業をされているかと思いますが、その経緯を伺えますか。
大鷲:⾼校を卒業して、販売の仕事や⼯場などで働いたりとか、⾊々ちょこちょこやってみたんですけど⻑続きしなくて。そうやって次の職を探しているタイミングで実家の家業であった農家ってどうなのかなってふと思ったんですよね。その時に親⽗に頭を下げて農業始めたことがきっかけなので今年でかれこれ 22年⽬になります。
-その中でモデルとしても活動されるようになるきっかけなどはあったのでしょうか。
大鷲:僕が今のモデル事務所にお世話になり始めたのがちょうどコロナのタイミングぐらいなんですよ。それ以前から知り合いの YouTube チャンネルとかに出させてもらったり、 Instagram などを通じてお仕事をいただくようになったりとかして。ちょっとそういう表に出るようなことにも興味を持ち始めた頃に、 今僕が所属している事務所に友⼈がすでに所属していた縁もあって今に⾄ります。

▪ファッションとの出会い
-⼤鷲さんは農業もスタイルを持ってやられていて、かつファッションにも独⾃の感覚をお持ちですが、洋服は昔から好きだったのですか?
大鷲:⾼校に⼊るタイミングでスケボーを始めて、 カルチャーに触れていくうちに、だんだんヒップホップにも興味を持つようになりました。ヒップホップや洋楽アーティストのスタイリングにも惹かれていって、そこからカルチャーや洋服の⾯⽩さにのめり込んでいったんです。やがて、ものづくりの背景なんかにも興味が深まり、いつのまにか洋服が好きになっていったみたいな感じですかね。
-Instagram では時おりご⾃⾝のスタイリングも発信されているかと思います。
大鷲:もともと SNS ⾃体は嫌いじゃなくて、いわゆる僕らの世代だと mixi とかそういう誰かと繋がるツールとしてあったと思うんですよ。全く知らない⼈とmixi で繋がってゴルフに⾏ったりとかもしてましたし (笑) 。 そういった感覚と同様に、 Instagram もインプットとアウトプットするものとして⾃分の中にはあって、洋服などを通して⼈との繋がりを⽣むツールとして活⽤しています。

▪働く中でのエイジングが証明する、洋服のクオリティ
-作業着のエイジングについての投稿はいつも楽しく拝⾒しています。
⼤鷲:作業着って⼈に⾒せるためのものじゃないですけど、⾃分の中では「探求」に近い興味があるんです。今の服って昔のものを解析してリアルなエイジングを追求していたりするじゃないですか。その中で、僕は過去を意識して作られた現代のものを当時のような道具としての使い⽅をしたらどんな表情になるのか⾒てみたいんです。今の時代、リセールすることを考えて服を買う⼈が多いですけど、僕は逆に潰すことを前提に着ています。洋服としての役⽬を終えるまで付き合いたいので、⽳が開いたら⾃分でリペアすればいいし、綺麗に取っておこうなんて気持ちは⼀切ないんです。

-今⽇着ていらっしゃるデニムジャケットも、凄まじい⾵合いですね
大鷲:ありがとうございます。これは KOOKYZOO というブランドのものなのですが、実は実質 1 年も着ていないんですよ。冬から春先にかけての 2 シーズン⽬くらいです。でも、僕の場合はネギ農家ならではのエイジングが出るんですよ。
–ネギ農家ならではとは?
大鷲:ネギの⽪をむく時、座って⼿を前後左右に動かすんですけど、袖や脇腹にネギの葉が当たるんです。それで緑⾊の⾊が移ったり、独特の擦れ⽅をしたりする。これは僕ならではのエイジングですね。ヴィンテージではなく今、リアルに⽣きている形として、ぜひ作った⽅に⾒てもらいたい気持ちもありますよね。
-チノパンも⾮常に味が出ていますが、どちらのものになりますか?
⼤鷲:これは AURALEE のものです。元々は私服⽤に購⼊していたものですが、かれこれ 5〜6 年仕事着として履き込んで、⾃分でリペアを繰り返しています。ここまで履き込んだからこそ、いいモノなんだなと気づかされることも多いです。作りや素材の良さって、実はボロボロになるまで履いて初めて分かる「結果論」だったりもすると思うんですよ。

-それはソックスにも通ずる話のようにも思えます。今回農作業ではブーツソックスを履いて頂きましたが、ソックスって試着もできないのでなかなか買う時に良し悪しの判断が難しかったりしますよね。
大鷲:僕は普段、⾜袋型の⻑靴で作業することが多いんですけど、冬場は⾜元が本当に冷えるんです。なので、そういった時はブーツを履くようにしています。このソックスは⾁厚なフィット感があるのでブーツには相性が良いですね。摩耗しがちな箇所を補強してあったり、フィット感を⾼めるために編み⽅が⼯夫されているところも気が利いています。このタフさやクッション性が、実際の作業現場で道具として使ってみてどう馴染んでいくのか。これから履き込んでいくのが楽しみで、これも結果論が待っている⼀⾜だと思います。
–ぜひ⼀年後にまたお話しを聞かせてください(笑)。

▪靴下をどう遊び、どう外すか
-作業着から打って変わり、私服に着替えて頂きました。⼤鷲さんらしいバランス感が素敵です。
⼤鷲:今回は綿⿇のドレスソックスをベースにスタイリングを組んでみました。綿⿇のカラッとした質感に合わせて Nuu というブランドのライトオンスのデニムを合わせ、そこに繊細な CHARVET のシャツをふわっとタックアウトでラフに着ながらも NICENESS のライダースでかたさを出す。素材や質感のコントラストやリズムを意識しました。あまり、靴下からコーディネートを組むことはなかったので新鮮ですね。

– 靴下を選ぶ際に気を付けていることはありますか?
⼤鷲:普段はスニーカーに⽩ソックスみたいなストリート寄りの合わせも好きですけど、今⽇はあえてドレス寄りのソックスで外してみました。⾒える範囲が狭いからこそ、遊び⼼を出しやすい。あえてドレスソックスをカジュアルに履くという⾃分だけの楽しさというか、⾼揚感。靴下は価格帯としても挑戦しやすいアイテムですから、積極的に⾊んなものを履き⽐べて、⾃分の琴線に触れるものを探すのが⼀番楽しい向き合い⽅じゃないですかね。靴下ってアンダーウェアでありながら外からも⾒える、⾃分のメンタルに直結するアイテムだとも思います。

-Tabio MEN では⽇本の職⼈が⼿がける多種多様なソックスを展開しています。ぜひ皆さんにも⾃由な発想で靴下を選んで頂ければと思います。
⼤鷲 : 靴下は履いてなんぼっていうか、 ⾊々挑戦して学ぶことで⾃分の肥やしになると思うんです。 靴下まで細かいところに気を配れると、 ⾃ずとトータルでも気を配ったスタイリングになるはずですから。